整形外科領域 監修

東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科
助教
加藤 壯先生 Dr.So Kato

PROFILE

  • 2007年東京大学医学部医学科卒業
  • 2007年日本赤十字社医療センター
  • 2008年東京大学医学部附属病院
  • 2009年国立国際医療研究センター 整形外科
  • 2011年都立駒込病院 整形外科
  • 2013年東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科
  • 2014年Clinical spine fellow, Division of Orthopaedics, Hospital for Sick Children, University of Toronto
  • 2015年Clinical fellow, Spinal program, Toronto Western Hospital, University of Toronto (2015年度チーフフェロー)
  • 2017年東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科

INTERVIEW インタビュー

整形外科医のお仕事

加藤 壯先生

僕たちは骨、関節、筋肉など人間の運動器を総合的に診る医師です。“外科”という言葉が入っていて手術も仕事の一部ではありますが、患者さんの運動器の痛みや不具合を、リハビリや薬物療法などあらゆる手を使って治療することが、整形外科医のプロフェッショナルな領域です。だから僕らは「運動器科」と呼ばれることもあります。

大きく分けると膝や手などの関節が専門の医師と、くび・腰など脊椎が専門の医師がいますが、どちらの臓器もお互いに影響を与えるのですべて一通りカバーしなくてはなりません。

ちなみに美容「整形」外科のお仕事は、実は我々ではなく「形成」外科の先生方の専門領域であることも知っていただけたら嬉しいです。

ほかの外科と整形外科の違い

加藤 壯先生

僕が整形外科医の立場から、整形外科が一般的な外科と異なると思うのは、患者さんのクオリティオブライフの向上を目指して手術をするところですね。整形外科の手術は、患者さんの生死に直結しない場合も多いです。ほとんどの手術では術後に患者さんがもっとたくさん歩けるようになるとか、痛みが少なくなるとか、生活の質の改善を目標にしています。だから一般的な外科では患者さんによくかける言葉だと思いますが、「悪いところは取れたから、もう大丈夫ですよ」ということがないんです。患者さんが困っていることをきちんと聞き出し、どこまで改善すれば納得していただけるのか話し合い、その期待に応えることが僕らの仕事のやりがいでもある反面、厳しさでもあります。

「ホワイトプレイヤー」プロジェクトについて

目のつけどころがおもしろいです。診療科によって医師の雰囲気が異なり、それぞれの科にステレオタイプのようなものが存在することを描き分けるというアイデアに惹かれました。「〇〇医ってだいたいこんな感じ」という“あるある”は、医療関係者はみんな感じていることです。一般のユーザーだけでなく、病院で働く各科のドクターたちにも「あるある!」と楽しんでいただけるのではないでしょうか。

整形外科医の特徴といえば、“体育会系”です。人間関係もそうですし、スポーツ好きで身体を鍛えている人も多いです。整形外科外来というところは子供からご高齢の方まで患者層が幅広く、話し上手でないと務まらないため、コミュニケーション能力は高いと思います。そのせいか病院内では“チャラい”という印象も持たれています(笑)。せっかちで短気な面もありますが、ひとしきり怒ったあとはニコニコしているようなカラッとした性格のドクターが多いですね。にゑさん(作画担当)の描く剱持は、長身で人懐っこい笑顔がまさに整形外科医という気がします。

世の医療エンターテインメントでは、救命救急科や心臓外科などを舞台にスーパーマンのようなドクターが派手な活躍を演じます。対してホワイトプレイヤーたちは科もばらばら性格もそれぞれですが、日常診療に従事するなかで各科助け合っている様子がリアルでいいなと思います。既存の作品では描かれなかった病院内の人間模様ですね。

加藤 壯先生

加藤 壯先生

「監修の際は修正ポイントのほか、自分自身の場合を長めの文章で書き添えています。必要に応じてうまく使ってください、と」
(加藤先生)

剱持緑郎と加藤先生の似ている点、異なる点

患者さんが期待していること(手術によってどれだけの改善を望むか)に対して熱く、積極的に追求していく点は自分と似ているかもしれませんね。漫画のなかで剱持が難しい脊椎の手術を提案するシーンがありますが、僕も決断のタイミングはなにより重要だと思いますし、そこに患者さんとの信頼関係ができていればなおさら、「がんばって治しましょう」と手助けしたいタイプです。

異なる点は……。初期のキャラクター設定表に「愛車:中古のフェラーリ」と書いてあったのですが、フェラーリは高くて僕もまわりの医師も乗れそうにないと制作スタッフさんに伝えたところ、変更になったようです(笑)。整形外科医には車好きも多いですが、いわゆる高級車が好きと言うより、単純にメカとして愛でている人が多い印象です。

加藤 壯先生
一貫して“わんこ系キャラ”として制作された剱持。加藤先生もかなりのわんこ系ドクターです。

整形外科医から大人の女性に啓発したい疾患

まず捻挫や骨折など、怪我をしてしまったなと思ったら一度、整形外科医にきちんと診察させてください。安静を守らなかったり、民間療法だけを続けていたりすると、治るのに時間がかかったり後遺症が残ったり、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

次に「肩こり」と「首の痛み」です。デスクワークをしている女性に多く、原因は圧倒的にパソコン作業です。これらの症状で手術に至ることはめったにありませんが、さきほどご説明したように、リハビリや薬物療法など、運動器を専門とする整形外科ならではの治療があります。それからもっと大事なのは、適切な運動とストレッチの指導です。続けられることを重視していますので、肩こりなら両手の指先を肩先につけて後ろにまわす……この簡単な動作だけで肩甲骨が動いてほぐれませんか? 今日からちょっと肩がこったなというときには、ぜひやってください。

おなじお仕事を続けている以上、上手く付き合っていけるように、自分でメンテナンスするという意識が大事かもしれないですね。もちろん、すごく痛いとき、痛みが続くとき、しびれを感じるときには病院へ来てください。

はじめて整形外科にかかる方へのメッセージ

僕らは問診と診察を大切にしています。痛みがあって整形外科に来られる方が多いと思いますが、その痛みの場所や特徴がどんなふうであるかということを、できるだけ詳しく伝えていただきたいと思っています。整形外科に対しては、レントゲンやMRIなどたくさんの検査をされるというイメージもあると思いますが、痛みの特徴がわかれば最適な検査計画が立てやすくなります。また、「痛いのは腰だけど、足もしびれる」とか「膝が痛いけど、手の指もこわばる」などの組み合わせで診断がつくこともあります。みなさんが関係ないと思うようなことや、なんとなく気になっていることも、遠慮なく伝えてください。

どういったことで困っていて、どこまで改善すればみなさんのライフスタイルの中で受け入れていけるのか……。ほんとうは僕らがそれを聞き出して差し上げることがとても重要なんですけど、みなさんからも遠慮なく伝えていただければと思います。

加藤 壯先生